公務員をやめて農家を始めたAさんの話

Aさんは埼玉県出身です。


Q.01 就農前は、どこに住み、何をしていましたか。

埼玉に住んでいました。仕事は、公務員です。



Q.02 就農前の仕事の年収は、幾らでしたか。また、休日はありましたか。

手取りで500万円以上ありました。
ほとんど働いていましたね、お盆もなく。ある意味、今と変わらないですね。
朝7時から働いて、帰ってくるのは夜9時~10時でした。



Q.03 家族構成を教えてください。

移住時には、夫婦2人です。今は子供が生まれて、3人家族です。



Q.04 奥さんも農業をやっていますか。

はい。ただ、最初から手伝ってもらおうという気は無いし、今もそうです。
自分1人の労働力で、生活が出来るまで稼げるようになろうと思っています。

その中で、手伝ってくれるというのは、喜んでオーケーなんですけれど。だけど例えば育児のほうが重要だと思っていますし。農作業をさせるために、ここに来たわけじゃないですから。

家族であれば、夫婦2人で家族の収入をあげるのか、旦那が1人で農業をやり奥さんには家を守ってもらうのか、とか。そういうきちんとした線引きが出来ていないと「何で手伝ってくれないのか」とかいうことになって、夫婦間にトラブルが起きると、良くないです。



Q.05 現在、農業収入は、どのくらいありますか。

去年は、7月から3月のみで、100万円いっていないぐらいの売上です。

今年の売上は、月平均で、何だかんだで15万円くらいにはなります。ですから、150万円くらいの売上になりそうです。



Q.06 現在、農業以外の収入は、ありますか。

ないですね。



Q.07 栽培作物と、栽培面積を教えてください。

ショウガを12アール。オクラが4アール。ゴボウが5アール。
カボチャが6アール。セロリが3アール。サトイモが4アール。以上です。

全部、完全に有機無農薬です。全部、露地栽培です。



Q.08 休みを決めてとっていますか。

とっていないです。




Q.09 長期休暇をとろうと思ったら、とれますか。

無理ですね。



Q.10 忙しい季節・暇な季節は、いつ頃になりますか。

春先の、3~6月が忙しいです。
割と時間がとれるのが、9月と、1~2月です。



Q.11 忙しい季節・暇な季節には、それぞれどのくらい働きますか。

暗くなったら帰ってくるから、どう考えても最大12時間です。太陽が昇ってから沈むまでしか働けないですから。平均すると、大体8時間くらいです。

夏は、朝がどうしても早くなりますね。夏野菜の収穫・出荷があるので、朝は早い時間から始めて、夕方6時くらいまで働きます。

冬になると、結構ゆっくりです。霜がおりちゃうと仕事にならないから、そうなると、午前中に働いて3時間、午後に働くのが4時間で、1日7時間くらいです。冬は夕方5時には暗くなりますから。



Q.12 平均的な1日のスケジュールを教えてください。

収穫・出荷・調整が午前中です。午後に栽培管理が、主な仕事です。



Q.13 現在、住んでいる家は、どのようなところですか。

借家の一戸建てで、家賃が3万円です。広さは、70~80坪です。



Q.14 農業を志したきっかけは、どのようなことですか。

妻が高知出身なので、高知に居住したいと思っていたんです。そのためには生活しなきゃいけない、その糧をどうやって得るかを考えたんです。

高知は求人がすごく少ないんです。基幹産業みたいなものも、高知県には、あまりないんです。働き口がないし、僕はただの公務員で特殊な技術もなかったので、何が出来るかと考えたら、一次産業しかない。

一次産業の中で何があるかというと、高知には農業しかない。それで、農業を選択したんです。たまたま農業をしたかったというのもあったから、選択できたんですけれど。それが一番大きな理由です。



Q.15 有機無農薬栽培をやるというのは、いつごろ決めましたか。

もし農業をやるのであれば、それしかないと思いました。慣行栽培をするつもりは、全くありませんでした。

自分が生物学科出身で、慣行栽培には批判的な面を持っていたんです。
化学物質に対する危険性とか、持続的に摂取したりすることで、慣行栽培をやっていて、いいことは一つもないと思ったんです。

慣行栽培をやれば、自分がつくったものも安全とはいえないし、自分自身も安全ではなくなるわけですし、家族もそうなる。だから慣行栽培をするという選択肢は、全くなかったです。

実際にオーガニックで作ったものと、慣行栽培で作ったものは、決定的に違います。慣行栽培だと、見た目とか、品質をそろえるわけですよね。
それは工場でつくる工場製品と変わらない。農業というのは命を育んでいく産業だから、そういう意味では品質不揃いが出てくるのは、いたしかたないことなんです。

そのことを、つくっている僕らが否定していたら、買うほうもやっぱり否定するだろうなと思うんです。やっぱり有機というもののプラス面を、自分自身、農業をやる前からすごく知っていたので、そういうことが原因です。

もう一つは、自分の子供に化学物質が入っているようなものを食べさせるつもりはないということです。買って食べる分には、選択できないからしょうがないけれど。せめて自分がつくるものは、自分の子供に安心して食べさせられるものを、と。

それが、自分がつくった野菜を買ってくれる消費者の方が、将来にわたって安全であるということに、つながっていると思うんです。そういうことが、有機栽培を始めるきっかけになっているんです。



Q.16 就農前に農業に抱いていたイメージは、農業を始めてみて変わりましたか。

労働時間が多いわりには、入ってくる賃金が、ものすごく低い。それは、思っていた以上に低いと感じました。

つくったものがあまりにも安い価格で消費者に出回っている現状というのが、自分が消費者の立場のときには、それでいいと思っていたんです。安いほうがいいだろうと。

ところが、自分が生産者の立場になってみると、これでは生産者は生活ができる収入が得られなくて、農業が補助金づけの産業であるということが、分かってきました。適正な労働コストが商品価格の中に含まれている、適正と考える価格からすれば、スーパーで売っている値段は、明らかにおかしいんです。

流通の中で卸しのマージンが含まれていたとしても、消費者は、例えば100円で買っている。
そうした場合には、生産者価格は100円の3割~4割になります。それは、あり得ないと思ったんですよ。




Q.17 他の産業に比べて、農業は儲からない職業だと思いますか。

例えばラーメン屋さんだったら、普通のチャーハンだって700円~800円で売っているわけですよ。その労働時間は、たかだか15分くらいで、お客さんに出しているわけじゃないですか。加工しただけで、これだけ値が上がる。

ところが、その素材をつくるほうが、はるかに時間をかけてつくってやらないとつくれないはずなのに、なぜか安い値段で取引されている。

そこら辺が、日本は消費者教育というのがなされていない、と思うんです。

あまりにも、安ければいいというような感覚だけで、ものを選んでいる人たちがいる。自分も生産者になって生産してみて、初めて、その値段では安すぎるぞと思いました。

慣行栽培であれば、見た目がきれいな野菜をつくろうとして頑張るわけですよね。ところが、それが安く売られている。そういう現状はおかしいと感じますね。もう少し、適正な値段というのが、あると思います。

例えば EU 諸国だと、有機農業をやっているだけで補助がつきます。ところが日本は、そういう補助がない。
EU の場合だと、安く出しても、補助金があることで生活が成り立つ。ところが日本というのは、自分でつくったものが適正な値段で取引されない。だから百姓離れも起きる、自分の子供には農業を継がせないという現状が起こっていると思うんです。

農業をやることでお金が入ってくるように、お金の部分だけでも魅力的な産業であれば、もっと入ってくる人は多くなるだろうと思います。



Q.18 農業で生計を立てるのは、難しいと思いますか。

農業を始めるときに「ゆっくり生活できればいい」「食っていければいいんだ」という考えの人は、わりと多いと思うんです。
でも、食っていければいいといっても、霞を食って生きていくわけにいかないから、それなりの年収がなければ、自分の家族を養うことは出来ません。

そうなったときに、自分一人で生きていく分にはいいんでしょうけれど、家族を養うために農業だけで食っていけるようにするには、どうするんだということになる。そうすると、ものすごく労働時間を増やさない限り、出荷量を増やさない限り、食っていけません。そうなってくると、非常に難しい産業だなと思います。

年収そのもの、つまり売上ではなく、利益として自分の手元に残るお金が500万円~600万円という人は、ものすごい大農家です。売上が1000万円を超えたとしても、人を雇っていたら人件費とか、施設の維持費とか、資材費が抜かれていくと、ハウス栽培をしている人だって、年収は多くて400万円ぐらいだと思うんです。それで、毎日働いて、休みは無いですから。

でも一方、どんな一流企業であっても、年間100日以上は休めるわけですから。そうなると、全然違うなという感じがしますね。



Q.19 農業を志してから移住するまでは、どれくらいの期間かかりましたか。

半年かかっていないです。妻が妊娠して里帰り出産しているときに、僕のほうで、そういうふうに決断して、こっちに来たんです。
決断してからは、割と早かったです。



Q.20 就農するまで、農業経験はありましたか。

無いですね。



Q.21 就農前の仕事・学業などの経験で、農業に役立っていることは、ありますか。

ほとんど無いですね。




Q.22 農業研修を受けましたか。

少しだけ行きました。3カ月くらいかな、腰掛けで。



Q.23 どのようなことを学びましたか。

何もしてないです。人脈をつくっただけです。有機をやっている農家さんのところに行って研修をしていたから、実際の研修というのは1週間ぐらいしか、なかったんじゃないかと思います。



Q.24 農家での研修で、技術的なことを学んだのですか。

ほとんど、そうですね。有機無農薬栽培をやっているところで機械を教えてもらったりしました。

栽培技術そのものというのは、有機でやっている人のところに、手伝いに行って、見たり聞いたりして、そういう形で覚えていったんです。




Q.25 3ヶ月という研修期間は長いと思いますか、短いと思いますか。

長いかな。もっと短くても大丈夫です。
機械の操作を学ぶので1週間くらい、と考えたら、もっと短くても大丈夫だと思います。畑がつくれさえすれば、種をまくとか、そういう管理は、誰かに聞けばいいんですから。種をまいたあとで聞けばいいですから。





Q.26 研修で学ぶべきことは、どのようなことですか。

無いですね。農業というのは、自分でやらないと、わからないです。感覚的なことも、すごく多いですから。
自分でやってみて初めて気がつくことのほうが多いですね。



Q.27 農業を始めて、肉体的なきつさは、ありましたか。

きつい部分があるなとは、思いましたね。きついというのは、自分が作業をしているときに虫が寄って来るとか。(笑)

例えば、マルチを張りたいときに風が吹いたりすると、困りますね。出荷は妻に手伝ってもらっていますが、畑はほとんど1人でやっていますから。
そうすると、思うようにいかなくてイライラする、そういうきつさは、ありました。
肉体的に、重くてつらいとかよりも、そっちのほうがつらかったですね。



Q.28 農業に使う自己資金は、ありましたか。

使おうと思えば何百万円も使えましたけれど、生活もありますから。
農業に使うお金は、初年度は100万円を限度にしました。



Q.29 資金の借り入れをしましたか。

していません。



Q.30 独立時に、農業関係で購入したものは、どのようなものですか。

大きいものは、トラクターと、ショウガの種です。トラクターが40万円、ショウガの種が28万円、これが一番大きかったです。

細かいのは、ちょこちょこあります。農業は、ちょこちょこが多いんですよね。
資材とか。トータルすると細かいものを合わせて20万くらいになっています。
トラクターさえあれば出来るという人もいますが、それだけじゃ出来ません。



Q.31 農地探しは、どのように行いましたか。

「NPO 法人」に紹介してもらいました。
埼玉にいるときに、そのNPO法人はインターネットで調べて、知っていました。
土地の借り賃は、畑は20アールちょっとで、年間3万円弱です。



Q.32 農業の中で経営部分は、どれくらいを占めると思いますか。

3分の1くらいだと思います。



Q.33 経営面で苦労したことは、ありますか。

初年度は売り先も紹介してもらったから、まだ自分での取引先というのは、無いんです。売り先は、有機農産物専門でやっている会社と、あとは直売所みたいなところです。だから、苦労も今のところは、無いですね。



Q.34 自然災害で大きな被害を受けたことは、ありますか。

去年は、ないですね。保険にも、特に入っていません。



Q.35 好きな農作物・嫌いな農作物は、ありますか。

嫌いなのは、豆とか。面倒くさいんです。収穫はいいんですけれど、袋詰めが面倒くさい。ものすごく手間をかけてやっても、結局、1袋100円くらいで、膨大に時間は、かかります。

栽培よりも、出荷の袋詰めなどの手間がかかるものが嫌いです。だから、葉物はやっていないです。ホウレンソウとか、ああいうのは、やっていないです。

好きなものは、そういう手間がないものですね。これといって大好きというのは、ありませんが。いやらしいけれど、楽なものは好きですね。



Q.36 おすすめの農作業グッズは、何かありますか。

ビデオケースですね。インゲンとかスナックエンドウ、オクラなんかを袋詰めするときに、ビデオテープのケースを切ったものに並べて、袋詰めするんですよ。
これも教えてもらったんだけど、便利ですよ。これは必需品ですね。

葉物を入れるときには、ペラペラのファイルを使ったりはしますけれどね。



Q.37 農業について、将来の目標は、ありますか。

年収が最低でも300万円です。そのために、効率化しなければいけません。
栽培・出荷・調整に時間をかけないこと。時間集約的にやっていくことです。



Q.38 今後、土地を拡大していく予定は、ありますか。

十分、今の広さで年収300万円まで持っていくことは可能じゃないかなと思うんです。広げたとしても、手が回らなくなるだけですから。
今、作物を植えていないところも合わせると、合計で1ヘクタール(100アー ル)くらい、あります。

自分の手が回らずに空けちゃっているところがありますからね。



Q.39 1年間にわたり、各月にどのような作業をしていますか。

2~3月に夏作の準備です。カボチャ・オクラ・ゴボウ・ショウガ・米です。
3月・4月が、ショウガの定植、夏野菜の定植・播種をします。

5月から収穫・出荷が始まって、それが8月まで続きます。
8~10月は、春作の準備です。
タマネギ・ニンニク・インゲン・スナックエンドウ、などです。

10月以降も冬場は収穫・出荷・調整が続きますね。




Q.40 移住にあたり、不安だったことは、ありますか。

来てみて、あまりにも社会基盤が不十分なところだというのを認識しました。
病院とか、公共機関とか、そういうものが、ものすごく少ないです。

農業をやりたいのと、田舎暮らしがイコールの人もいれば、イコールではない人もいると思うんです。僕の場合は、田舎暮らしとしたいということから始まったのでは、なかったんです。

例えば、自分の子供が病気になったら、病院が近くになかったら困ります。小学校は近くにあるけれど、中学校は遠いとか、高校に進学するときにどうするとか、そういう面で不安は多いです。

あと、困ったというより、たまには外で食いたいなと。(笑)そういうときに、四万十町は、店が無いんです。コンビニが1軒しかない。

そういうところだと、家族での遊びというのかな、そういうのでお手軽に、例えば「15分車で走れば遊べるところ」なんていうのは、全く無いので、それは困ったというよりも、ちょっと落胆したところです。

もともとそういうところに生まれてきた人は、それが当たり前だから感じないでしょうけれど。地方と都市の格差というのは、賃金格差だけじゃなくて、そういうものの格差というのも感じます。

あと、田舎というのは、情報がものすごく少ない。僕自身はいいんですが、これから情報をたよりに大人になっていく、子供たちの世代にとっては、これは明らかに不利だなと思います。





Q.41 情報が少ないとは、具体的にどういうことですか。

例えば、本とかです。インターネットはどこでも同じですけれど。実際に手にとって見るようなもの、例えば、遊ぶ場所とか、そういうものというのは、あまりにも格差があります。

農業をやる・やらないに関わらず、田舎に住むか、都市に住むかで、違うなと感じます。



Q.42 地域社会に溶け込むために、気をつけていることは、ありますか。

特に無いですね。例えば地域のならわしで、道の草刈りとか、そういうのにきちんと参加するというくらいで、これといって何かの祭りがあるわけでもないですし。最低限、迷惑をかけないようにするだけです。



Q.43 地域社会との付き合いで、困ったことはありましたか。

困ったというより、何でこんなに金がかかるんだろうかと思いました。テレビを見るのにお金が要るとか。
難視聴地域が多いから、民放を見るのにお金を払わなきゃいけないんです。
共同のアンテナから線を引くのに6万円かかるんですが、それを今、月1000円で、5年間で払っている状態です。それにはびっくりしました。

あと、家賃の高さ。農業をやるには、農業仕様の家を借りなきゃいけないじゃないですか。でも、そういうのを仲介するような人は、いないですよね。
これから農業をやりたいという人が入ってきたときに、家を世話してくれる善意の団体があれば出来るでしょうけれど、そういうのが無い土地に行く人にとっては、非常に入りづらい産業だと思います。

Uターンだったら、まだツテがあるから、土地に入れる可能性はあっても、I ターンの人間にとっては、選んだ場所に住むきっかけをつくるのが、非常に難しいと感じます。



Q.44 この地域に都会の人が住む場合、どのように家を手に入れたらいいですか。

僕はNPO法人を知らなかったら、こんなに早く、ここには入っていなかったと思います。
地元の人とのパイプをつくらない限り、家を貸してくれないですから。

空家はあるんですけれど、それを仲介する人がいないから、空家は空家のままになっているんです。よそ者がそこを借りたいと言っても、持ち主も、誰だかわからない人には貸したくないですから。



Q.45 役場は、不動産のあっせんはしないのですか。

役場は、やらないです。お金が絡む問題ですから。公の機関というのは、お金が絡む問題は絶対にやらないんです。

例えば町営住宅や村営住宅を仲介することは出来るけれども、個人の家は出来ない。空家情報を持つことはできても、その空家をあっせんするということは、今の日本の行政システムの中では、あり得ないことです。
ただ、それを誰かがやらない限り、農業というものに、やりたくても入っていくことは、出来ないでしょう。

だから、独身で入って来るのが一番入りやすい。家族持ちは難しいと思います。家族持ちが入ってこようと思ったら、家族が入るような仕様の家を探さなきゃいけない。独身だったら広かろうが小さかろうが、どんなにボロでもいいわけですよね、自分さえ住めれば。そういうのも、あると思います。

でも、地域にとって何が一番力になるかといえば、人が多くなるほうが活力になるだろうし、当然人が増えたほうが地域は自然に活性化するはずです。

もし、そういうことを本気で考えるのであれば、家をあっせんしてくれる機関があれば、農業をやりたい人は、いっぱい入って来ると思います。

作物をつくっていない畑はいっぱいあるんですから、家さえあれば出来るんだけれど、家がないんです。サラリーマンと違って、農業って、道具がいっぱいあるじゃないですか。
それを置く場所を考えたときに、家がない限り成立しない産業ですから。それは大きいと思います。



Q.46 都会の人と、この地域の人の違いを、感じることはありますか。

こっちの人のほうが、良くも悪くも、人に対する関心は強いですね。関心を持ってくれるということは、あります。

例えば、ここに引っ越すことが決まったときに山奥の人まで知っているとか。
すぐに、ここに誰が住むということが、噂がばっと広まったり。
でも、そのお蔭で、みんな知ってくれますし。都会ではあり得ないことですね。



Q.47 この地域で子育てするにあたり、いい点はどのようなことですか。

連れ去られる危険がないとか、車に轢かれちゃうとか、そういう危険は非常に少ないですね。知らない人が入って来るということがあったら、みんな分かります。子供に対する安全性というのは、都会とは格段に違うと思います。

それに、子供に「人を見たらあいさつするんだよ」という、人間らしい躾けが出来る場所ですね。都会にいたら「知らない人についていったらだめ」とか「声をかけられても話したらだめ」という教え方をしないと、自分を守れないじゃないですか。

でも、子供のときに「人と会ったらあいさつするんだよ」とか「困っている人がいたら助けてあげるんだよ」と言えるところは、田舎の良いところだと思います。人を信じるか信じないかは、大人になってから自分で決めればいいことですから。

子供のうちは、人の顔をみたらあいさつする、「こんにちは」「おはようございます」が言えるようにならないと。
そういう意味では、田舎のほうがいいかな、というのは、あります。



Q.48 この地域で子育てするにあたり、悪い点はどのようなことですか。

子供の数が少ないから、遊び相手がいないですね。同世代の子供が少なすぎます。あと、教育を受ける機会、教育をどういう内容で受けるかということに関しては、すごく不利なんだろうなと思います。

例えば、少人数の学校と、大人数の学校では、図書館の蔵書を比べたって、明らかに少ないはずなんですよ。そうすると、本を読む、知識を得るということに関しても、親が積極的に与えるか、本人が好きになって積極的にやらない限り、なかなか難しい。それは、人数が少ないところの欠点だと思います。



Q.49 学校は近くにありますか。

小学校は、2キロくらいかな。みんな自転車で通っていますね。


Q.50 田舎の生活で退屈することは、ありますか。

時間をつぶすところが無いですね。川遊びをするとか、山遊びをするというのは、お手軽に出来ますけれど。たまには、デパートみたいなところに行きたいことも、ありますよ。そのために高知市まで行かなきゃいけないとなると、つらいかな。

毎日毎日デパートに行きたいわけじゃないけれど、たまに「今日は何もすることないな、じゃあデパートにでも行ってぶらぶら見ようか」とかいう選択肢が無いんです。

四万十市や須崎だったら、町中に回転寿司やファミレスがあったりするから、そんなに感じないかもしれないですけれど、ここだと無いですね。

たまにはマックが食いたいと思ったときに、2時間も高速を飛ばしてマックに行くというのも、馬鹿馬鹿しいじゃないですか。たまには、そういう癒しも必要かなという。人間が多いのも嫌いなんですが、たまには人恋しくなるというか賑わいが恋しくなる。

そういうところがお手軽にあればいいとは、思います。



Q.51 バイト・パートをしようと思った場合、働き口はありますか。

半年に1回くらい、短期間のパートの広告があったりしますけれど。
あまり無いですね。



Q.52 移住先を探すにあたり、何か注意することは、ありますか。

中途半端に来ないほうがいいと思います。
蓄えがあって、何年間か耐えられる資金力があるか。1人で来て、うまくいかなかったら3~4年で区切って帰るということを決断できる人だったら、いいと思います。

でも、入ったはいいけれど、何年やっても食っていけないとか、見切りがつけられないと、厳し過ぎるだろうと思います。その人に関わった人にも迷惑をかけちゃうから。
絶対に誰かに世話にはなるので、それに対して感謝の気持ちを持っていないといけませんし。



Q.53 新規就農する前に、家族間で話し合うべきことは何ですか。

農業を始める前に、ちゃんと明るい未来が予想できない限り、やめたほうがいいですね。雰囲気だけで、というのは、やめたほうがいいのかな、という気はします。

家族と話し合って役割分担を決めておくとか、ちゃんと話し合って来たほうがいいと思います。きちんと確認しておかないと、難しいという気はします。同じ10万円を稼ぐのでも、理解が得られての10万円と、理解が得られないでの10万円は、ものすごく違うと思います。

1年目は作物もあまりないし、収入がほとんど無いんです。僕は今まで公務員だったので、収入が無いということが、想像できなかったんです。

毎月お金が入っていた人間が、突然入らなくなるというのは、自分も不安だし、周りはもっと不安になると思うんです。

農業って、収穫がなければ、働いているのに収入がない産業じゃないですか。
それを家族に理解してもらうまでに、また、自分が理解するまでに、3年くらいはかかるのかなという気はするんです。

新規就農の人に、そういうことを教えてくれる人間がいればいいんですけれどそんなのは分からないじゃないですか。自分も聞いているだけでは、実感がなかったけれども、やってみて初めて、働いているのに収入がゼロって、あるんだなと思いました。

せめて最初に100万円でも持っていないと、厳しいと思います。機械は借りることが出来ても、マルチだとか、トンボだとか、そんなのを借りるわけには、いきませんから。

そういう意味では、農業を起業するには、ほかの産業と違って、いろいろなハードルがあるという気がします。



Q.54 ほかの産業と、農業の違いは、どのようなものですか。

例えば運送業だったら、トラック1台自分で持っていれば、あとは仕事をとってくれば、できる。ところが農業って、トラクター1台あったって、それで作物は出来ない。

本当に農業をやろうと思った場合、「起業」という感覚が自分に染み込んでこないと、サラリーマンの感覚でやっても、うまくいかなくなる。ずれが大きくなると思います。

自分は月給とりだったから、自分が病気をしていても、休んでいても、毎月給料が入ってきていたんです。
ところが農業って、休んだらその分は入ってきませんから。自分が社長さんにならないといけないから、社長という感覚を身につけないと、社長という自覚が生まれないと、楽しくもないだろうなという気はします。

いっぱい売ろうと思ったら、面積を大きくするとか、工夫すればいいことですから。実際には天候とかもあるから、そうはうまくいかないんでしょうけれど。

そういうものというのが、見えやすいという気がします。

ただ、いいものを作ったからといって収入が多くなるかといったら、そうでもない。だから、経営部分が3分の1くらいを占めると思うんです。百姓は、つくってしまえばいいというだけではない。「つくること」「売ること」「お金を回収すること」、どれもやらなくちゃいけませんから。

そうすると、普通の経営者、社長さんと一緒ですよね。作るだけじゃなく、売る努力をしないといけない。セールス、営業をしないといけない。農協に納めちゃえばいいという感覚もあるんだけれど、農協は安いから、そうすると大面積でやらないといけない。大面積でやるには、有機では、出来ない。

僕もそうだったんですけれど、新規就農の人は、「作りさえすれば売れる、お金になる」と思っているんです。ところが、そんな簡単じゃない。作っていても売れない、売り先があっても注文が入ってこないと売れない。作物は生き物だから待ってくれないし、捨てるしかない。

自分がつくったものを捨てなきゃいけないのは、悔しいというより、切ないですね。食べてくれたら、自分もお金になるし、おいしいと思ってくれるだろうなと分かっていても、捨てざるを得ない。
売り先がなくて捨てざるを得ないというのは、切ないものがあります。在庫として抱えられれば言うことないんですが。

そうすると必然的に、日持ちのしない作物は少なくなります。根菜類だと、畑に貯蔵できたりするじゃないですか。貯蔵が出来ると、売る機会も増えるだろうし。

だから、今も作るものが根菜類中心になってきているんですけれどね。


Q.55 農業の可能性は、どのような部分で感じますか。

自分の作ったものが直接お金になるから、自分の努力がすぐに分かる、それはいいところだと思います。
自分のやっていたことが、何年、何十年先にわかるというのも、もちろん面白い仕事だと思いますけれど。農業は、自分のやったことの結果がすぐに分かる仕事であるのは間違いないですから。
「種をまいて収穫するまで」と考えたら、最長でも半年くらいですよね。その中で自分がやってきたことが評価されますから。

あと、自分が丹精込めてやったからといって、良い物が出来るとは限らない。
どこかで諦めなきゃいけないところがあります。逆に、放っておいたものが終わってみたら良かったとか。自分の努力とは別の、不確定な要素をいかに自分でコントロールするかという面白さも、農業にはあると思います。

だからといってハウスをやるつもりは全然ないんです。ハウスは、不確定要素を極力減らして、自分でコントロールしていくわけですよね。そうなってくると、これは工場でつくる工業製品と似たものになってしまうから、つまらなくなってしまうんです。

でも、経営の安定ということを考えたら、ハウスを選択肢の一つとしてやっている人がいるのは、分かります。ハウスで成功する人は、食っていけている人ですから。

おかしいと思うのは、あんなハウスに何で3000万円、4000万円もかかるのか。鉄パイプだけなのに。どこかで誰かが儲けているんだと思います。(笑)
今のところ、ハウスをやるつもりは全然ないですね。誰かがハウスをくれるんなら別ですけれどね。(笑)



Q.56 田舎で不動産を賃貸・売買するにあたり、注意することは、ありますか。

農業をやりたくて家を借りる場合には、家の評価額とかは全く関係なく、仲介をしてくれる人との話し合いで賃料が決まってくるので、そこの部分で初めは口が出せないんです。仲介の人が間に入ることによって、本来あるべき家賃よりも高くなる場合も、あると思います。

住むところはすごく大切ですし、そこに適正な値段で入れればいいんですけれど。でも、農業をするために、田舎で家を借りた場合には、全部自分で直さなければならない。家のどこかが悪くなれば、自分のお金を持ち出して直すわけです。前の人が残していったゴミを捨てるのも自分ですし。そうやって、初めて家を貸してくれますから。家は、ハードルが高かったですね。

農家の家は、普通古いんですよ。大抵、トイレやお風呂も外で、ぼろぼろの小屋みたいなところです。ここはトイレもお風呂も家の中にあったので、ここにしたんです。



Q.57 農業を始めるにあたり、自己資金は必要だと思いますか。

露地でやる場合だと、最低でも300万円はほしいかなと思います。



Q.58 自己資金が無いけれども就農したいという人には、何とアドバイスしますか。

僕に自己資金が無かったら、農業をやりたいと思わなかったと思います。単純に、機械が無きゃいけないというのは、分かりますから。
米農家だったら1000万円近くの機械代が必要というのも分かりますから。

自己資金がゼロで農業をやろうと思う自体が、逆に不真面目じゃないかと思います。

若くして農業を始めたくても、1年間働いてお金を貯めてという選択肢が十分とれるんですから。まず、自分で自己資金を貯めてから、農業を始める。
半年は住めるだけの生活費を持っていないと、駄目だと思うんです。

どこかで研修を受けて、自分では畑を持たないで、誰かの手伝いをしながら1年間研修をするというのだったら、それは飛び込んですぐに出来ると思いますけれど。でも、1年間の生活費はかかりますし。そう考えると、お金は必要じゃないのかな。




Q.59 就農するにあたり、農業の勉強・研修は必要だと思いますか。

3カ月やればいいんじゃないかと思います。
ただ、時期によって、いろんな作業がある時期の3カ月と、何もない3カ月では全然違うと思いますけれど。

種をまいて3カ月でとれるような葉物である場合には、機械も、その3カ月で覚えることも出来るでしょうし、調整・出荷も覚えることができるから、3カ月あれば十分だと思います。



Q.60 研修機関を選ぶにあたり注意することは、ありますか。

自分でお金を出して、自分でやらない限り、あまりためにはなりませんから。あまり研修そのものには期待をしていなかったんです。

乱暴は言い方ですけれど、土を耕してなくても、種をまいてしまえば、作物は生えてくるという部分は、あるじゃないですか。それをきちんと、どういう形で、集約的に効率良くするかというための研修が必要だと思うんです。そういうことを学べるような研修であれば、いいのかなという気はします。

のんべんだらりとした作業を教えてくれるのではなくて、「こうすると楽で、時間も短縮できる、違う仕事も同時にできる」そういうことを教えてくれる研修が、一番ためになるという気がします。



Q.61 新規就農者が栽培作物を選ぶにあたり、注意することはありますか。

トマトやメロンは、やめたほうがいいですね。あまり、メロンの B 品とか、見ないですよね。ハウスでつくる高級野菜みたいなものを、露地でやろうとしても、うまくいかない、難しいだろうなと思います。

かといって、毎日使うような野菜は高く売れません。タマネギ・ニンジン・キュウリのようなものは、高くは売れないから、つくっても儲かりません。新規就農でやる場合には、ある程度使う、お金になる作物、換金作物を経営の中に入れないと厳しいと思います。

ショウガなんかは、換金作物として大きいです。10アール分作れば、1年間は何とか10アールで出来るショウガだけで食いつなぐことは、出来ます。そういう作物が経営の中にないと、厳しいかなと思います。

それと新規就農して最初にやる作物は、何でもいいから、失敗しないでお金になる作物がいいです。安い高いは関係なく、とにかくお金になるもの。地域の、そういう作物をアドバイスしてくれる人が近くにいると、いいと思います。

例えば、この土地のショウガですと、10アールあたりの売上が、うまくいけば150万円。100万を下回ったとしても、それだけの収入があれば、何とかなりますから。ほかは、ちょこちょこ作ればいいわけだから。

そうなると、どこの地域で、どういう作物を作るかというのは、大きいと思います。妻の実家のほうではラッキョウが特産なんですけれど、そこでショウガをつくっても、気候も違うし、うまくできない。
逆にここでラッキョウをつくっても、うまくいかなかったりします。適地適作というのがあると思うから、その中で換金できる作物を見つけて就農するのが、いいと思います。



Q.62 農業に向いている性格は、ありますか。

田舎の人と付き合える人じゃないと、やっていけないと思います。道路沿いの畑で作業していると、トラックに乗ったおじさんが必ず止まって話をしていくんですよ。自分が急いで作業をしていても、ずっと話しかけてくる。それを、うんうんと聞いているうちに、日がくれちゃったりする。

でも、そういうおじさんとの話も大事ですから。「早く帰ってくれ」みたいになっちゃうと、向こうからもやさしくしてもらえないですし。田舎の人は、そういう人たちなんだというのは、分かっていないといけないと思います。自分一人で生きていく、だから田舎に移住する、というのは、無理だと思います。

新規就農だと物を持っていないから、「こういうのが無くて困っているんです」と言うと、貸してくれたり、くれたりしますし。「すいません」「ありがとう」が、きちんと言える人じゃないと、田舎ではやっていけないと思います。



Q.63 農業を始めるなら、何歳までに始めたらいいと思いますか。

少なくとも、自分の年(46歳)までなら出来ると思いますよ。
自分より上は想像できませんが。若ければ若いほど、動けますから。動けて、しかも家族がいなければ自由度も大きいし、失敗に対する許容範囲も広くなりますよね。

ものづくりだから、早く始めて感覚的なものを身につけたほうがいいから、早く入れば入るほどいいと思いますね。



Q.64 農業を始めても役に立つ、前職の職業・資格・特技などは、何かありますか。

営業マンは役に立つだろうと思います。営業のノウハウを持っている人は強いだろうなと思います。売り先を開拓できるでしょうから。

作るということは、突き詰めていけば難しいこともあるんだろうけれど、それなりのものは出来ちゃうんです。新規就農の人間でも B 品くらいは出来ちゃう。
でも、それを売るところが無いんです。

売り先をつくることができる、営業するノウハウを持っている人は、成功する確率は高くなると思います。インターネットで、ものを売れる技術がある人だったら、それも強いと思います。

情報を発信できる技術・ノウハウを持っている人は、遠隔でも自分のことを知ってくれるチャンスは増えるわけだから、自分で作ったものを売りさばける機会は増えますよね。

あと商品のデザイナー。袋詰めをするにしても、おいしそうに見える包装とかラベルとか、デザインの技術を持った人は強いですね。スーパーでも、主婦の人は、ぱっと見ただけで選んだりするので、かわいい包装ができたりすると、有利だと思います。

すべて売る技術ですね、売るノウハウを持っている人は強いと思います。

作るほうは、畝が多少曲がっていたって、作物は出来ますしね。病気にならない限り全滅するということは、ありませんし。僕が感じているのは、売るための人脈をたくさん持っている人のほうが、いいと思います。

都会から来るのであれば、都会で世話になった人とコンタクトをとり続けていたほうがいいと思います。もしかしたら、その人が有機農産物を扱っている店を知っているかもしれないし。そうしたら、自分でつくったものを売るルートも出来るじゃないですか。都会との縁をすべて切るのじゃなくて、人と付き合いをもったままのほうが、いいと思います。

I ターン就農者にとって、それは強みだと思います。農業の技術は知らなかったとしても、人脈があるということは強みです。農村で野菜を売るわけにもいかないので、売るのは都会になりますから。



Q.65 農業・田舎暮らしをする上で、読んでおいたほうがいい本は、ありますか。

農業の専門書とかは、いろいろ読みました。でも、農業も、本を見ながらやって、うまくいくこともあれば、うまくいかないこともあります。それは、本を読むよりも、つくっている人に聞いたほうが早いですね。

あと、料理の本はいいと思います。百姓は料理ができたほうがいいですね。
食べ方を知っている、保存方法を知っているというのは、大きいと思います。






Q.66 100人の新規就農希望者がいるとすると、結果、100人中何人が農業で生計を立てられると思いますか。

100人の売り先が確保できれば100人ともうまくいくし。売り先が1件もなければ、全員成功できなくて失敗するでしょうし。それは、作ったものを売るところがあるかどうかで、変わってくると思います。

売る気持ちが無いと、だめだと思います。多少出来が悪くても、それを売ろうという意欲がある人は、いいと思います。作って、売って、お金をもらうまでで初めて百姓は完結しますから。
作物が「売れた」のを喜びにする人と、「出来た」のを喜びにする人では、結果が全然違うと思います。

僕なんか収穫していても売り先のあてがないと、つらいですよ。でも、売ったものがお金になるとか、注文が来ると、嬉しいですよね。そっちのほうが収穫する喜びよりも大きいです。

初めは、作ったものを収穫する喜びのほうが大きいかなと思ったら、初めから僕は苦しみでしたから。インゲンを収穫していて、すごいつらかった。「こんなもんやるか」と思っていました。半日ずっと座りながら収穫しているから、肉体的につらかったということも、ありますし。

有機でやっている人は、「点」でやっている人が多いんです。僕が研修にお世話になった農家の方は、「面」でやる思考だと思うんです。面でやったほうが、量も揃います。

例えば、A さんと B さんと C さんがインゲンをつくっていれば、A さんに100パック来た注文を A さんが捌ききれなくても、B さん・C さんにお願いできる。取引先に穴を空けるわけにはいかないですから。そうすると、非常に安心感がありますよね。

1人で農業をやるのじゃなくて、面でのネットワークになれば、流通量が多くなればスーパーも相手にしてくれますし。つくっている量が3人合わせて20トンいけるとすれば、スーパーに継続的に出せる、すると取引先が安定してくる。

新規就農の人が入っていく場合に、ぽんとどこかに入っていくのではなく、ある程度、「面」の関係が出来ているようなところに入っていく人は、成功していくと思います。本当に自分1人で入ってきて、人脈を増やして、食えるようになるというのは、すごく時間がかかるという気がします。



Q.67 農業を始めて何年くらいしたら、収入が安定すると思いますか。

人によると思いますけれどね。僕は3年を期限にしています。



Q.68 移住前に、都会でやっておいたほうがいいことは、ありますか。

売り先を見つけることです。無農薬でやりたいのだったら、無農薬野菜を扱っているお店を見つけておくことです。インターネットで探しても、意外とホームページを持っていない店が多かったりして、無いんですよね。契約をしてから農業を始めたら、食いっぱぐれは無いと思いますよ。(笑)

そういう店を少しでも多く見つけておくと、いいと思います。田舎から、はるばる東京まで行って店を探すって、出来ないんですよね。都会にいるんだったらそういう店や、レストランなんかはいっぱいあると思うので。そういうのを少しでも多く目をつけておくのがいいと思います。



Q.69 独身・夫婦・子供連れ、それぞれに新規就農の有利・不利は、ありますか。

独身の人は、くじけたときに元気づけてくれる人がいない、話し相手がないというのは、不利だと思います。家族があるか無いかは、大きいですね。

逆に独身の人のほうがいいことは、1日24時間を、全部自分のために使える。だけど、家族持ちはそれが出来ない場合があります。そうなってくると、家族持ちのほうが農業にあてる時間は少なくなる場合があると思います。当然奥さんなりが手伝ってくれるというプラス面はありますけれどね。

1たす1が2じゃなくて3になる場合がある。1人だったら1たす幾つというのが無いけれど、逆に、絶対に24時間という物理的な時間が確保されていますね。

あとは、家族がいると、自分の作ったものをテストケースとして食べてもらえます。まずいかうまいか、すぐに聞ける。自分の作ったものを出荷するときに、きれいに見えるかどうかなど、意見が聞ける。そういうのは、家族持ちのいいところだと思います。

独身の人は、労働力はどうしても1人分ですから、それは厳しいですね。1人の人は、時間は多くても、そういうところはつらいと思います。1人じゃ出来ない作業もあるから、そういうときに、お金を払って雇うとかをしなければならない。家族持ちだったら、家族に手伝ってもらえるから。だからこそ、1人の人は、他の人に手伝ってもらわないといけないから、その分、ネットワークが広がりやすいとは思いますけれどね。



Q.70 失敗したという体験は、何かありますか。

農作業での失敗は、幾つもありますね。畑に行ったら、1日のうちで失敗したと思うことは、幾つも出てきますね。



Q.71 成功したという体験は、何かありますか。

作物がうまくできた、うまくできなかったという意味での失敗成功ならいくらでもありますが。仕事として大失敗した、成功したというのは、無いですね。



Q.72 新規就農者が、サラリーマン並の400万円程度の収入を得ようと思ったらどのような農業形態が最も可能性が高いと思いますか。

売り先ですよね。研修とかよりも、売り先さえしっかりしていれば、いいと思います。売り先があれば、つくることにも力が入りますしね。作ってから売り先を見つけたら、遅いです。

新規就農の人に必要なのは、背広ですね。営業のために、背広は1着残しておかないといけないです。百姓だから背広なんかいらないというんじゃなくて背広は1着持っておく必要は、あります。



Q.73 I ターン就農して良かったことは、どのようなことですか。

忙しくても、家族といられることです。家族を見ることができる範囲にいることができるというのは、大きいですね。

会社勤めだと、忙しくなった場合には全く家族と離れますよね。帰って来て寝るだけ。朝は早く出て行く、それだけになる。でも、農業をやって忙しくても、常に、そこにいるわけですよ。それは、農業のほうが断然いいですね。



Q.74 I ターン就農して嫌だったことは、どのようなことですか。

もちろん、お金が少なくなるというのは、嫌でしたね。お金の心配なんかしないで生活していたのが、お金の心配をしながら生活しなければならなくなったというのは、嫌ですね。



Q.75 I ターン就農を成功させるために、重要なことは何ですか。

まずは健康です。体が弱かったら農業できないから、病気がちの人はやめたほうがいいです。体が資本ですね、肉体作業ですから。元気がなくても食欲だけはあるとか、そういう人じゃないと駄目だと思います。

あと、細かい人は駄目です。例えば「虫が1匹出てきた」「ちょっと畝が曲がっている」、そういうことが気になる人よりも、「このくらいどうでもいいや」というぐらいの人が、いいんだろうなと思います。

研修しにいった先の農家の方には「百姓はやり直しをしてはいけない」と言われたんです。やり直したら時間がかかるから、失敗したら、そのままにしておきなさい、と。そのとおりで、畑が広くなると、やり直しをしていたら時間がかかってしょうがないから、ちょっとぐらいはどうでもいいと思えるいい加減さが必要です。

家庭菜園だったらすべての虫を取りつくすことはできるけれど、10アール、20アールといったら、畑にいる害虫を全て手でとろうというのは無理です。
最小限に被害を抑えることさえできれば、いいと思いますね。



Q.76 I ターン就農希望者に、アドバイスはありますか。

来てくれた人と一緒に何か出来れば、こっちも助かると思うんです。「面」のつながりが出来ますから。ある程度、持続的に大きなところと取引が出来るように、集団で作物をつくることができれば、1人がいろんなものをつくらなくて済みます。すると、ある1人が、米とショウガだけ、というふうに集約することが出来ます。

そうでない場合には、小口の売り先しかないと、いろんなものをつくってたくさん売らないといけない。そうなってくると、非常に労働が面倒臭くなります。

来る前に、覚悟は必要ですね。自分の想像と違うことがあっても落胆するより、そういうのは覚悟の上で、腹を据えて来るほうがいいと思います。何が起きても「これは計算のうちだ」と思うぐらいでないと。

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