個人宅配・飲食店の宅配をしているKさんからI ターン就農希望者に、アドバイス

Kさんは、6年前、建設コンサルタントから農業へと転職しました。

1年間の研修を受けた後、無農薬・減農薬での多品目野菜栽培を行います。

松山市への個人宅配、飲食店への宅配が、主な販売先。



Q.01 就農前は、どこに住み、何をしていましたか。

出身は、愛媛県なんですが、親が転勤族だったので、いろいろなところに住んでいました。

就農前は、東京でサラリーマンをしていました。仕事は、建設コンサルタントです。



Q.02 当時の年収は、幾らぐらいですか。

年収は700万円くらいありました。
一応、週休2日だったんですけれど、忙しいときは毎日出ていましたし、残業もありました。徹夜するようなときも、ありましたね。結構ハードでした。



Q.03 家族構成を教えてください。

就農前は、夫婦2人暮らしです。現在は、子供が2人います。



Q.04 現在、農業収入は、どれくらいありますか。

売上は400万円くらいです。収入は、売上の半分くらいです。
一昨年に黒字になりました。




Q.05 栽培作物と、栽培面積を教えてください。

多品目の野菜を、無農薬・減農薬栽培しています。露地栽培の旬の野菜を、農協を通さずに、直接販売するという形態でやっているんです。
1年中、常に10種類くらいの作物があるようにしています。

認証を取っていないので、公的に有機農産物とは言えないんですけれど。無農薬で出来るものは、無農薬で作っています。農薬を使わなきゃいけない作物もあるので、そういう作物は減農薬栽培しています。

畑の面積は、60アールです。トマトだけ雨よけハウスで栽培をしていて、ほとんどは露地の畑です。



Q.06 現在、農業以外の収入は、ありますか。

無いです。



Q.07 休みはどれくらいとっていますか。

週に1日休めたらいいという感じです。休みが取れないというより、取っていないという感じです。固定して、何曜日に休み、とかいう形ではないです。



Q.08 長期休暇をとろうと思ったら、とれますか。

冬だったら可能でしょうが、夏には難しいです。夏は、野菜の成長も早いですからね。




Q.09 忙しい季節・暇な季節は、いつ頃になりますか。

忙しいのは、春と秋の、植えつけの時期です。でも、1日の働く時間は、そんなに変わりません。

暇な時期というのは、無いですね。普通の農家さんだったら、収穫して出荷するだけでしょうけれど、うちは全部、自分で販売もしているんです。

週に2回、松山市に宅配しています。ですから、農作業が暇な時期はありますけれど、販売などの他の仕事は忙しいので、暇な時期というのは無いですね。



Q.10 平均的な1日のスケジュールを教えてください。

現在(8月)ですと、朝5時半に起きて、朝8時くらいまでに、ちょっとした収穫などをしています。

朝食後に、消毒をしたり、除草をしたり。今は暑いので、11時半くらいに帰ってきて、2時半くらいまでは家にいますね。
午後の作業も、午前と同じような感じです。大体、夏は夜7時くらいまで作業しています。



Q.11 現在、住んでいる家は、どのようなところですか。

一戸建ての貸家です。家賃は5万円です。




Q.12 農業を志してから、現在までの経緯を教えてください。

僕は農学部を卒業しているので、前々から農業に興味はあったんです。前職の仕事で、30歳くらいのときに農業絡みの仕事があり、農業の実態を調べるチャンスがあったんです。

そのとき調べた結果、農業は、流通の中間マージンを取り払えば儲かるんじゃないかと考えたんです。農協に出荷して、市場に出して、卸売を通せば、中間マージンの経費が、売値の70%くらいかかっているんです。

中間マージンを除けば利益率が上がりますから、十分、農業が出来るんじゃないかと考えました。その上で、無農薬栽培なりの付加価値をつけて、価格を高く設定して、販売すれば儲かるんじゃないかと思ったんです。

その考えを実証したかったし、そのためにも、自分で農業をやってみたかったんです。

そういう経緯で、会社に辞意を伝えたんですけれど、1年は我慢しろと言われて、31歳のときに退職しました。

愛媛県の農業普及所に友達がいたので、まずはそこに話にいきました。

今、住んでいる大洲市以外にも候補地はいろいろとあったんですけれど、最終的には、自分が生まれた土地であるし、知らない土地でもないので、大洲市で就農することにしたんです。住む家は、農業普及所の方が、いろいろと地元の方々に当たってくださり、紹介してくれました。

移住して、最初の1年間は、地元の農家さんについて研修をしていました。そのあと独立して、自分で農業を始めたという流れです。



Q.13 農業を始めることに対して、家族の反対はありましたか。

就農に関して、反対はありませんでした。前の仕事がひどかったですからね。
ほとんど家にいませんでしたから。時間をとるか、金をとるかですかね。



Q.14 移住先や研修先を探すにあたり、どのように情報を集めましたか。

基本的には、東京での農業セミナーとか、農業フェアです。そういうところに何回か行きました。

それと同時に、東京近郊の、山梨や長野の畑を見に行って、農業に対するイメージを膨らませていました。



Q.15 就農前に農業に抱いていたイメージは、農業を始めてみて変わりましたか。

お金の面でいえば、考えていたほど甘くはないと思いました。簡単には価格設定も上げられないですし。販売は、宅配だけでやろうと思っていたんですがなかなか急にはお客さんも増えません。

口コミというのは、そこまでスピードは無いですから。就農前に考えていた将来設計よりは、現在は低いですね。

最初に考えていたのは、現在の3倍くらいは出来ると思っていました。売上で年間1200万円くらいはいくと思っていました。でも、そんなに甘くないです。

もともと、400人くらいのお客さんがいればいいと思っていたんです。400人くらい大したことないだろうと思っていたんですが、宅配だと400人なんてなかなか集まりません。その辺が、抱いていたイメージと違いました。現在のお客さんは50人なんですが、50人と400人では、全然違います。

そういう販売の面の問題と、生産面での問題もあります。
400人に売ろうと思っても、400人に売るだけのものが作れないですね。自分に経験が無い分、量は作れません。

無農薬・減農薬でやっていて、技術的な面は、試行錯誤しながらやっていますから、まだ確立された技術は無いんです。いきなり、野菜が作れるわけじゃないですね。



Q.16 無農薬・減農薬での多品目栽培をやるというのは、いつごろ決めましたか。

会社を辞めるときには、そういうイメージを持っていました。
長ナスが好きだったので、長ナスを軸にしようと最初は考えていたんです。でも、いろいろ考えていると、旬のものをいろいろと作って売るほうがいいかなと思ったんです。リスク分散になりますから。

例えばトマトだけ作っていて、相場が悪ければ、収入が無いですし、台風が来たら全部だめになります。そういう面では、多品目を作ることによりリスク分散も出来ると考えたんです。



Q.17 就農地に求める条件は、ありましたか。

まずは、農地が確保できるかどうかです。

大洲市のほかには、愛媛県の内子町に、パイロット事業で作った畑があったんです。1枚の畑で70アールあったので、使い勝手は良さそうだったんですが、周りで栽培している作物がタバコであったり、果樹であったりして、農薬を結構使っているところだったんです。

風が吹くと、農薬の飛散もありますし、土地の値段が高いこともあって、そこはやめたんです。




Q.18 農業を志してから移住するまでは、どれくらいの期間かかりましたか。

2年くらいです。



Q.19 就農するまで、農業経験はありましたか。

ほとんどありません。



Q.20 就農前の仕事・学業などの経験で、農業に役立っていることは、ありますか。

前職の建設コンサルタントの仕事は、調査・企画など、考える仕事でした。ある目的に対して、いろいろな手法を考える仕事だったんです。
そういう面では、農業でどうやっていけばいいか考えるという部分には、結構役に立っています。あとは、前職は人前でしゃべる仕事でしたから、お客さんと話したりすることにも、役に立っていると思います。

農学部で学んだことは、全然役に立っていません。
学校は意味ないです。(笑)



Q.21 農業研修を受けた施設は、どのようなところですか。

農家さんのところに1年間行っていました。大洲市で、研修を受け入れてくれる農家さんは、そこだけでした。ですから、何軒かあるうちから選んだということではないです。

そこでは、夏はスイカ、冬はハクサイをメインで作っていました。あとはトマトやキュウリを少し作っていました。

やらせてもらった作業は、植えつけ・収穫。あとトラクターの使い方も教えてもらいました。最後のほうは、接ぎ木などもやらせてもらいました。スイカでも、ハクサイでも、種まきから収穫までの一連の流れを教わりました。
作業時間は、朝8時から、夜6時くらいまでです。日曜日は休みでした。

愛媛県の I ターン事業で研修費が出たので、月に15万円もらっていました。



Q.22 研修は、役に立ったと思いますか。

役に立ったと思います。



Q.23 1年間という研修期間は、長いと思いますか、短いと思いますか。

個人的には、ちょうどいいです。僕は、すぐに自分でやりたかったので。



Q.24 農業を始めて、肉体的なきつさは、ありましたか。

ありました。運動もしていなかったので、最初は腰を痛めたりしていました。研修期間中の1年間は、体がボロボロになっていましたね。自分で始めてからも体が慣れるまでは2年くらいかかりました。



Q.25 農業に使う自己資金は、ありましたか。

農業用と考えていた資金は、500万円です。今は使いきって、残っていません。そのほか、生活費など、農業以外で500万円使っています。



Q.26 資金の借入は、しましたか。

していません。





Q.27 独立時に、農業関係で購入したものは、どのようなものですか。

トラクター・軽トラ・管理機・動力噴霧機くらいです。
それらは、地元の機械屋さんで中古を買ったり、ネットオークションで買ったりしました。結構安く買えました。オークションで買った20馬力のトラクターが、送料込で81万円でした。地元で買うのも、ネットで中古を買うのも、同じようなものでした。

細かいもの、マルチだとか、防虫ネットだとかも、以外と高いんです。一つ一つは安いものでも、足していけば、結構大きくなります。


Q.28 独立時の耕作面積は、どのくらいでしたか。

30アールでした。
最初は、ナス・ピーマン・トマトなど、5種類くらいの栽培でした。



Q.29 農地探しは、どのように行いましたか。

最初の農地は、市役所を通して探してもらいました。
農業委員会を通す探し方と、市役所を通す探し方があったんですが、市役所の制度のほうが契約も簡単だったので、そっちを利用しました。土地の借り賃も、そっちのほうが安かったんです。
借地料は、大体、10アールで2万円です。



Q.30 現在の売り先は、どこですか。

うちの販売先は、大きく分けて、個人向けの宅配・店舗向けの宅配・遠方への野菜セット配送です。

松山市の個人向けの宅配は、週に一度、水曜日に行っています。多いときで20件くらいです。週に1回、ファックスで注文書をお客さんに送るんです。その時期にある野菜の中から、欲しい野菜をお客さんに選んでもらって、それを揃えて宅配するんです。1件あたりの売上は、平均して800円~1000円くらいです。

飲食店・量販店などの店舗向けの宅配を、土曜日にやっています。これは全部で7件くらいです。7件で、1週間の売上が1万円くらいです。

それと、東京などの遠方のお客さんに、野菜セットを発送しています。月に50~60件くらいです。50~60件のお客さんに、月に1セットを送ります。野菜セットは、7~8種類の野菜を入れて、送料込で2000円です。夏期はクール便で送るので、2210円です。

現在(8月)の野菜セットだと、長ナス・キュウリ・オクラ・万願寺トウガラシ・トウガン・トマト・アスパラガス・各種葉物、という感じです。
そのほかに、余ったものなどは直売所に出しているので、大体、作った野菜は売り切ることが出来ます。

今は、いろんな販路を持っていて、はじめて成り立っているという形なんです。
だから、どれが重要ということではなく、どれも抜けたらまずいんです。

普通の農家は、収入に波がありますよね。でも、うちはどっちかというと、サラリーマンのように、固定給を積み重ねているような感じなんです。その一番のベースが、松山市の個人客への宅配なんです。50件のお客さんがいて、月々入ってくるお金が計算できています。でも、50件のお客さんがいるから安泰ということではありません。中には、契約をやめていく人も当然いますし、今、これだけいるから安心ということは、ないです。



Q.31 最初の売り先は、どのようにして見つけましたか。

遠方への野菜セット販売は、東京にいたときの知り合いにメールを送って、お客さんを集めました。

松山市での宅配は、今、親が松山市に住んでいるので、まずは親の知り合いからはじめて、増やしていきました。

レストランは、松山の個人客からの紹介でした。居酒屋にも宅配しているんですが、そこは、県の普及所から話が来ました。スーパーは、僕の大学時代の後輩が店長をやっているので、そこに出させてもらっています。

広告とか、飛び込みとか、特別な営業活動はしていません。全部口コミです。



Q.32 現在までの、各年の農業売上は、どのくらいですか。

2003年が244万円。2004年が318万円。2005年が391万円。
2006年が384万円です。毎年、400万円弱くらいですね。



Q.33 経営面で苦労したことは、ありますか。

最初はお客さんが10人くらいで、野菜の種類も、5~7種類くらいでしたから、なかなか収入に結びつきませんでした。苦労といえば、お客さんをどう増やすかということです。

無理に「他の人にも紹介してくれ」とは頼めませんでしたけれど。まずは味を知ってもらって、美味しいと思ってくれれば、他の人に紹介してくれます。



Q.34 野菜の価格は、どのように決めていますか。

スーパーの野菜は、ほとんど100円均一みたいに、安いですよね。でも、東京で売っている有機野菜は、ホウレンソウでも200円を超えています。

そこまでいくと、買うには高すぎると思うので、その間くらいの、ちょっと高いけれども、届かない値段じゃないというくらいの価格に設定しています。




Q.35 農業の中で経営部分は、どれくらいを占めると思いますか。

結果に反映される割合でいうと、半分はあると思います。
ちょっとしたロゴを作ったりとか、ポップを作ったりとか、レシピを作ったりとか。

自分のところを PR するパンフレットも作りました。営業用の名刺を作って、いつでも配れるようにするとか。そういうことも、結構やりましたね。



Q.36 生産面において、最初から思ったような作物が作れましたか。

生産面では、出来は、初年度が良かったです。ピーマンなんか、初年度が一番良かったですね。原因はよく分からないんですけれど。だんだん栽培品目が増えていって、手が回らなくなっていったんですかね。

有機農業をやっている人に聞いたら、「初年度はいい。それから収量が下がっていって、8年目でドンと増える」と言うんです。

それは、今まで農薬や化学肥料を使っていた土地に、有機肥料を入れて土地の状態を変化させていく、変化の途中の、安定していない状態のときは、収量が減るということらしいんです。有機をやりはじめて8年目くらいで、土壌の状態が有機で安定して、そこではじめて、収量が伸びてくるという話も聞きました。そういうことも、あるのかなと思います。



Q.37 有機無農薬栽培において、苦労したことは、ありますか。

虫です。病気はほとんど出ません。むしろ虫ですね。アオムシ・ヨトウムシとか。
葉物だと、はっきりと影響が出ます。それは苦労します。

キャベツなんかでも、虫食いがあると、売るのも気が引けますから。商品ですから、あまり虫食いのひどいものは売れませんし。そこは苦労しますね。
昔は虫食いがひどかったですから。昔からのお客さんは、「最近は上手になったね」と言ってくれますけれど。(笑)

美味しいのは当然として、見た目も、ある程度はいいものを作りたいです。有機無農薬の中には、虫食いだらけのものも、あるんですよ。いくら有機無農薬とはいえ、そういうものは、いけないと思います。それはただ単に、何もしていないだけじゃないかと思います。

本当に有機無農薬のものだけ欲しいという人は、値段が高くても、虫食いが多少あっても、そういう作物を買うんでしょうけれど。
うちのお客さんは、百円均一のような安い野菜ばかりを買う人ではなくて、もうちょっと上の層。ちょっとお金に余裕があって、ちょっと健康志向で、美味しいものならお金も出すという客層ですから。有機無農薬だからといって、あまり品物の品質が悪いと、買うのにも抵抗があるでしょうから。

生産技術も、最初のころから比べると、生物農薬を使うとか、作物を植えるタイミングなども分かってきて、大分進歩したと思います。



Q.38 技術的には、どういうところが進歩したと思いますか。

農薬散布をするにしても、見極めが分かるようになってきたと思います。これは無農薬でいけるとか、農薬を使うにしても、効果的に使えるタイミングが分かってくるとか。そういうのを見る目は、多少はついたと思います。

無農薬栽培の出来る時期というのも、分かってきました。いくらお客さんから葉物を求められても、この時期に植えたら、味も悪いし、虫食いも多いものになるとか。美味しいものを作るのには、タイミングがありますから。

例えば、ニンジンです。美味しいニンジンを作るには、今(8月)種をまいて、年末年始にかけて収穫するのが一番美味しいんです。でも、お客さんは一年中欲しいというんですよ。
夏場にスーパーで売っているのは、北海道産のニンジンだけだと思います。

僕の住んでいる愛媛県でも、夏場に作れないことはないんですが、すごくニンジン臭い、固い、美味しくないニンジンになってしまうんです。そんなものは売りたくないですから。やっぱり、美味しい時期のものに、美味しいものを売って、無いものは無いという感じで売っています。



Q.39 有機無農薬栽培において、作りにくい作物は、何ですか。

葉物です。葉物は無農薬で作りにくいけれど、無農薬で作らなきゃいけない作物なんです。一番、生に近い状態で食べる野菜ですから。ですから、葉物は絶対に無農薬で作っています。

長い時期を採る、ナスとかピーマンも難しいですね。農薬を使うとしても、化学農薬じゃなくて、生物農薬をメインに使っています。どうしても、しょうがないときには、化学農薬を1回くらい使うこともありますけれど。極力、化学農薬ではなく、自然から抽出した物質であるとか、そういうものを使うようにしています。



Q.40 自然災害で大きな被害を受けたことは、ありますか。

台風が来たら、大洲は洪水になっちゃうんです。借りている畑の中にも、遊水地があるんです。台風で川が氾濫したら、遊水地に水を溜めるんです。
2年前に台風が来たときは、そこの畑に植えていたナスとかは全部水に浸かって、だめになりました。



Q.41 自然災害に備えて、保険に入っていますか。

入っていません。



Q.42 おすすめの農作業グッズは、何かありますか。

管理機は、結構重宝しますね。





Q.43 農業について、将来の目標は、ありますか。

まだまだ、いけいけどんどんという感じでやっていこうと思っています。

限界がよく分からないんです。今、借りている60アールの畑の中でも、1年間使わなかった畑もありました。そういうところを上手に使えば、収穫量は増えるし、お客さんをもっと増やしても大丈夫だと思います。また、生産技術が上がれば、もっと効率よく、作物が作れると思います。

お客さんの開拓は、休まないほうがいいと思っています。コツコツと、ちょっとずつ増やしていこうと思っています。
そして将来的には、お客さんに買いに来てもらえる観光農園をやることを、目標にしています。

作物は今と同じように、旬の野菜を多品目で作って、そこにお客さんが足を運んで、収穫して、買って帰るという形です。単価は今のまま、変えないでやりたいと思います。

つまり、今、自分で配達しているものを、直接お客さんに買いにきてもらう。それが究極の、中間マージンの削減ですから。流通経費がゼロの状態ですね。

そういう状態を目指しつつ、農業の楽しさを伝えられるような形というのは、観光農園かなと思っているんです。



Q.44 地域社会に溶け込むために、気をつけていることは、ありますか。

組に入ったのも、最近なんです。まだ収入も安定していませんから。組に入っても、辞めて出て行く可能性も、あるかもしれなかったので、何年かやってみて、農業経営が安定して、これからもやっていけるかなという感じがしたので組入りしたんです。

組とは、地区の自治会みたいなものです。掃除をするとか、回覧板が回ってくるとか、お祭りの準備をするとか。そういうのが、ここで言う「組」です。
それまでも、農業後継者の集まりに入って、農業絡みの知り合いを作るという活動は、していました。



Q.45 都会の人と、この地域の人の違いを、感じることはありますか。

違いはあるんでしょうけれど、気にしなかったら、気にしないで全然大丈夫です。そんなにストレスになるようなことは、ないです。

噂好きで話好きなのは、田舎特有でしょうけれどね。自分の知らないところで自分の話がされているということは、よくありますけれど、気にしなければ大丈夫です。



Q.46 買い物の不便とか、病院が近くにないから不安ということは、ありますか。

大洲市では、そういう心配は無いですね。田舎といっても、一応、市ですし。結構、栄えていますからね。



Q.47 この地域で子育てするにあたり、いい点・悪い点はどのようなことですか。

子供が親の仕事を、ずっと見ていられますよね。将来、農業をやるにしろ、やらないにしろ、親が一生懸命働いている姿を見せられるというのは、いいことだと思います。

悪い面というのは、今のところは感じていないです。



Q.48 田舎暮らしにおいて、良かったことは、どのようなことですか。

一番は、子供を伸び伸びと育てられること、家族が一緒にいられるということですね。



Q.49 田舎暮らしにおいて、嫌だったことは、どのようなことですか。

サラリーマンをやっていたときは、金はありましたから、よく旅行にも行っていました。そういう、お金の面での自由さは、減ったと思います。今までは無駄使いしていたということかも、しれませんけれど。(笑)

外食の回数も減るでしょうし、金銭的な面ではサラリーマンほどの裕福さは無いですけれど、気持ちの面では、貧乏だという感じはしませんね。



Q.50 生活費は、都会にいるときと比べて、変わりましたか。

安くなったと思いますよ。遊びに使うお金が、減りましたね。東京にいたときは外食も多かったし、旅行もよく行きましたが、そういう余暇的なものが少なくなりましたね。




Q.51 移住先を探すにあたり、何か注意することは、ありますか。

僕がよく言われたのは、「何を作りたいかを考えてから、場所を選びなさい」ということです。都市近郊型の農業をしたいのか、本当の田舎で農業をしたいのか。そう言われて、結局こんな中途半端な町にいるんですけれど。(笑)

大洲市は中途半端なんです。山奥の田舎ではないですし、都市近郊というには、松山市からは遠いです。



Q.52 田舎で不動産を賃貸・売買するにあたり、注意することは、ありますか。

うちの場合は、普及所にお願いして、農業に対するやる気だけを見せたら普及所の方が動いてくれて、家を探してきてくれたので、ある意味ラッキーだったと思います。

一般的に、こういう方法がいいというのは、何も分からないんですが。でも、やる気と誠意さえ見せたら、人が動いてくれると思うんです。

田舎は、人に定住してもらいたい、来てもらいたいという意識は強いです。でも、具体的なビジョンを持っていないまま、いい加減な気持ちで「農業をしたい」といって来ても、普及所も協力してくれないと思います。

ある程度、明確なビジョンを持って相談すれば、いろいろな人が、親身に動いてくれると思います。






Q.53 農業を始めるにあたり、自己資金は、どれくらい必要だと思いますか。

僕も就農前に、いろいろ本を読みましたし、中には「1000万円じゃ足りない」とか書いてあるものも、ありました。でも、それは、やりようだと思います。
場所によって、土地の値段の条件も全然違うでしょうし。

ただ、1年間生活できるだけのお金は、持っておいたほうがいいと思います。



Q.54 自己資金が無いけれども就農したいという人には、何とアドバイスしますか。

無理でしょう。U ターン者で、もともと家と畑があるというなら、資金がゼロでも分かりますけれど。I ターン者は、まずは家と畑を借りないといけないのに、資金が無かったら貸す側も貸せないですよね。信用が無いと思います。

自己資金が無かったら、何の準備も無しに来たんじゃないかと思われます。
現実問題として、どうやって食べていくのか、分かりませんし。



Q.55 就農するにあたり、農業の勉強・研修は必要だと思いますか。

研修は、したほうがです。僕は研修を受けたことで、農業技術だけではなく、地域の人とのつながりも出来たんです。研修先の農家さんから、いろんなところに紹介していただきました。農家さんで研修を受けたことで、僕という人間が、この地域に来ているということを、周りの皆さんに知っていただけました。

あとは、研修によって、農業の生活スタイルが身につきます。農業をやるとなると、サラリーマンみたいに、休みが決まっていることはありません。やらなきゃいけないことは、自分が、ちゃんとやらないといけません。サラリーマンとは、心構えが違います。

研修中に1回、ガツンと喝を入れられたことは、ありました。子供の具合が悪かったときに「病院に連れて行くので休みます」と言うと、「休むやつは、辞めてしまえ」と怒られたことがありました。まだ、サラリーマンの働き方を引きずっていて、農業に対する心構えが出来ていなかったんだと思います。

農家の1日の動きは、サラリーマンとは全然違いますから。その生活リズムを覚えるには、研修は必要だと思います。

技術的な面は、当然役に立つことは多いですが、研修で学んだこと全てが役に立つわけではないです。例えば、有機農業をやりたい人が、慣行農業の研修を受けたら、中には役に立たない部分もあると思います。農業のやり方は、人それぞれで違うでしょうから、研修で学ぶことでも、全部が役に立つわけでは、ないです。



Q.56 農業とサラリーマンの、心構えの違いとは、どのようなことですか。

僕がサラリーマンをしていたときは、有給があったりして、僕自身は休みたいときに休めたんです。もちろん、仕事に対しては一生懸命やっていました。でも、サラリーマンの仕事は、休もうと思ったら、そこで休めたんです。

農作業に関しては、作物が生きていますから、今やらなきゃいけないことを、今やらないといけないんです。やらないと収入にならないんです。

サラリーマンは、働きが多少悪くても、極端に言えば座っているだけでも収入になります。農業は、自分できちんと働かないと、収入になりません。そういう違いは、あります。



Q.57 移住前に、都会でやっておいたほうがいいことは、ありますか。

都会でしか出来ないことを満喫しておくことですね。(笑)






Q.58 新規就農者が栽培作物を選ぶにあたり、注意することはありますか。

特にないです。好きなものを作ったらいいと思います。

経営スタイルは、人それぞれでしょうから。僕のように多品目栽培をやるにしても、売り先をレストラン向けに想定するのだったら、栽培作物は西洋野菜中心になるでしょうし。

売り先を一般のお客さんに想定するのだったら、定番野菜中心になるでしょうし。自分のやりたい経営スタイルで、作るものは変わってくると思います。ですから、特に、これをやったらいいという栽培作物は、ありません。



Q.59 新規就農する場合、何歳までにやったらいいと思いますか。

僕は「農業」をしたいんです。農的暮らしじゃなくて、農業をしたい。農業で生計を立てたいんです。
だから30歳くらいで会社を辞めて、農業を始めたんです。

普及所の人に相談したら「定年してから就農しなさい」と言われたんですが、そんなのは面白くないですから。だから、30歳で就農したんです。

田舎暮らし・農的暮らしではなく、「農業」をやりたいのだったら、早いうちがいいです。早いうちといっても、1回、サラリーマンなりの異業種を経験した上で、農業を始めたらいいと思います。他の仕事をすることで、いろんな人脈も出来るし、前職の仕事の経験も生かせますから。

農業だけをずっとやっていると、作ることしか考えないことが多いんです。売ること、経営することについては、農業以外の業種を経験することで、多少なりとも、違う視点はつきますから。そういう経験を踏まえた上で、農業を始めたほうが、いいと思います。

あまり年齢が高くなると、体力的に、農業は厳しいと思います。農業ではなく農的暮らしだったら、いつ始めてもいいと思います。

 
Q.60 農業を始めても役に立つ、前職の職業・資格・特技などは、何かありますか。

営業マンだったら、いいですよね。口八丁・手八丁の人。

あと、経理が出来る人、経営力がある人も、いいですね。これからの農業は経営が大事ですから。経営・営業が出来るような能力がある人が農業をやると、強いんじゃないかと思います。

作ることは、たぶん、誰だって出来るんです。作ることよりも、作ったものをいかに上手に売るかという部分で、差が出てくると思うんです。



Q.61 農業・田舎暮らしをする上で、読んでおいたほうがいい本は、ありますか。

人それぞれ何かバイブルのような本があると思うんです。こういう農業がしたいという、目標となる本があって、それをベースに自分でやれるような。そういう本を持っておいたら、いいと思いますね。

僕の場合は、井原豊さんの『ここまで知らなきゃ損する 野菜のびっくり教室』です。井原豊さんの考え方は「無農薬で出来るものは無農薬で作る、出来ないものは最低限の農薬を使う」という考えです。
普通は、作物ごとに肥料の入れ方を変えますが、井原さんの考え方だと、どれもほとんど一緒、同じ土で作るという考え方なんです。僕は、その考えをベースに、やっています。



Q.62 農業を始めて何年くらいしたら、収入が安定すると思いますか。

うちの場合は、黒字になったのが4年目です。
低位安定なんです。(笑)儲けるというより、蓄えの食い潰しが少なくなったという感じです。

本によっては、安定するまでに5年くらいかかると書いてあるものもあります。

人によって農業の経営スタイルは違うでしょうけれど、5年くらいで安定していないと、難しいと思います。

5年やって無理なら、やめたほうがいいと思います。



Q.63 独身・夫婦・子供連れ、それぞれに新規就農の有利・不利は、ありますか。

独身の人だと、将来的に大変かもしれないです。というのは、田舎は女の人が少ないですから、結婚できないかもしれない。そういうことを考えたら、都会で結婚してから農業を始めたほうがいいと思います。



Q.64 失敗したという体験は、何かありますか。

生産面での失敗は、いくらでもありますね。
経営面での失敗というのは、今のところ、大きな失敗はありません。



Q.65 成功したという体験は、何かありますか。

新しい野菜を年に1~2品種、栽培するんですけれど、その新しい野菜を PRして、食べ方を教えて、それがヒットしたときは、嬉しいですね。
例えばトウガン・ロメインレタス(コスレタス)・ズッキーニ・エンサイ(空芯菜)、などです。「店で見たことはあっても手にとらない」ような野菜ですね。



Q.66 新規就農者が、サラリーマン並の400万円程度の収入を得ようと思ったら、どのような農業形態が最も可能性が高いと思いますか。

金になるのは、イチゴとか聞きますね。
トマトは、以前は良かったけれども、今は価格が低くなっていますね。

収入が400万円ということは、その倍くらい、1000万円くらいの売上は必要です。そうなると、ハウスをやるにしても、30アールくらいの面積は必要でしょうね。

広めの面積での施設栽培なら、それくらいの収入を得ることは出来るでしょうけれど、新規就農者がそんな施設を用意するのは大変だと思います。



Q.67 I ターン就農して良かったことは、どのようなことですか。

まずは、家族と一緒に居られることです。

それと、自分の思い通りに仕事が出来ますね。売り方にしても、自分の考えで仕事が出来ます。それは、良かったことです。



Q.68 I ターン就農して嫌だったことは、どのようなことですか。

あまり無いですね。野菜が、思うように作れないことぐらいです。



Q.69 I ターン就農を成功させるために、重要なことは何ですか。

まず、1~2年は生活できるだけの資金。それと、具体的にどういう農業をしたいかという目標と、それに対する熱意でしょうね。

有機農業か、慣行農業での施設栽培か。
農協を通じて売るのか、個人で売りたいのか。

どういう農業でもいいんですけれど、自分がやりたい農業に向かって、想いを貫いてやっていく意志が重要だと思います。



Q.70 I ターン就農希望者に、アドバイスはありますか。

どういう農業をしたいか、どういう売り方をしたいか、そういうビジョンをしっかりと持っておいたほうがいいと思います。

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