ビニルハウスできゅうりを栽培しているMさんから就農者へアドバイス

Mさんは、41歳のときに、大阪から高知へ移住し、農業を始めます。

現在、高知県春野町に25アールのハウスを借り、キュウリを栽培しています。




Q.01 就農前は、どこに住み、何をしていましたか。

大阪の心斎橋にある画材店に、23年間勤めていました。
結婚してからは、ずっと大阪に住んでいます。



Q.02 当時の年収は、幾らぐらいですか。

一番多いときで650万円くらいです。だんだん景気が悪くなってきて、下がって、前職を辞めるときは550万円くらいでした。



Q.03 家族構成を教えてください。

就農時も今と一緒で、4人家族です。妻と、子供が2人います。



Q.04 現在、農業収入は、どのくらいありますか。

毎年すごく変わりますね。
去年は、売上が1200万円。所得は、その半分くらいです。



Q.05 栽培作物と、栽培面積を教えてください。

ハウス栽培のキュウリが、25アールです。
面積は、独立時から今まで、全く変わっていません。




Q.06 現在、農業に従事しているのは何人ですか。

夫婦2人で、やっています。



Q.07 現在、農業以外の収入は、ありますか。

無いです。



Q.08 休みはどれくらいとっていますか。

春野町のキュウリは、10月に定植して、翌年の6月末まで収穫するんです。
その間は一切休みが取れません。キュウリの収穫が無い7月から10月までは後片付けや、次の作の準備がありますが、大体、8月は1カ月休みです。



Q.09 忙しい季節の平均的な1日のスケジュールを教えてください。

ハウスにキュウリが植わっている期間は、日の出から日暮れまで、ずっと働いています。仕事が終わらないときは、夜に懐中電灯を使って残業もしますから一番多いときで、朝6時から夜9時までとして、1日15時間くらい働いています。それが、12月から2月ぐらいです。

平均的な1日のスケジュールは、まず日の出と共にハウスに行って、収穫をします。午前中いっぱい、収穫作業をします。

昼に、1回出荷に行きます。ハウスでお弁当を食べて、午後からはキュウリの管理作業です。

そして夕方4時くらいから、また収穫をして、終わるのが6時くらいです。そのころには暗くなってくるので、仕事は終了です。



Q.10 現在、住んでいる家は、どのようなところですか。

2階建ての一戸建てで、家賃が6万5千円です。家賃は思っていたより高くついたので、ちょっときついです。このあたりの相場は5万円前後でしょうね。

きれいじゃなくても、ちょっと古い家が空いていて、それを貸してもらえたらいいなと思っていたんです。でも、空いているけれど貸せないという家ばかりだったんです。

たまたま、新しいきれいな家が空いていたので、そこを借りることにしました。





Q.11 農業を志してから、現在までの経緯を教えてください。

前職の仕事をしていた2002年に、僕と娘の2人が同時に大きな病気になって、半年くらい会社を休んだんです。そのときに、会社で希望退職者の募集があったので、会社を辞めたんです。ですから、農業をしたくて会社を辞めたのではなくて、先に病気で会社を辞めていたんです。

会社を辞めて、次に何をしようかなと考えていたときに、高知に住んでいる私の母から「高知に来て農業をしないか」と勧められたんです。それまで、農業なんて、全く頭にありませんでした。

自然の中で暮らすことは、憧れでもありましたし、何より妻が農業をすることに賛成してくれたのが、大きかったです。



Q.12 移住先や研修先を探すにあたり、どのように情報を集めましたか。

情報を集めたのは、県庁に相談に行ったことと、インターネットです。




Q.13 研修先候補はいろいろありましたか。

いいえ、最初から1つです。研修先は学費も寮費もすべて無料だったんです。そういうこともあって、お金も全然かからなかったので、研修先には悩みませんでした。



Q.14 農業を志してから移住するまでは、どれくらいの期間かかりましたか。

3カ月くらいです。



Q.15 キュウリ栽培をやるというのは、いつごろ決めましたか。

将来的に施設園芸をしようとは思っていましたけれど、具体的に何を作るかというのは決めていませんでした。自分が就農した土地で、そこの特産品なりを作ろうと思っていたんです。

最初から自分で、作りたい作物を決めて、そこの土地に入ると、そこの土地に作物合わない場合がありますから。就農した土地に合わせて作物を決めるつもりでいました。



Q.16 施設園芸をしようと決めていたのは、なぜですか。

施設園芸でなければ、生活ができないと思いました。露地栽培とか有機栽培だと、生活が安定しないと思ったので、施設園芸に決めました。



Q.17 春野町のハウスを借りることが出来たのは、どういう経緯ですか。

母親が春野町に住んでいたということがあって、春野町の農家さんに知り合いがいたんです。その知り合いの方に、春野町の農業委員会を紹介してもらい、農業委員さんたちに、空いているハウスを探してもらいました。



Q.18 就農するまで、農業経験はありましたか。

全く無いです。農業をするなんて、少しも考えていませんでした。ですから、農業に対する憧れも無かったんです。

そういう面では、ちょっとほかの就農した人とはタイプが違います。農業に憧れて就農したわけでは、ありませんから。



Q.19 就農前の仕事・学業などの経験で、農業に役立っていることは、ありますか。

無いです。前職はサービス業で、人と接する仕事だったので、全然関係ないですね。パソコンが使えるということぐらいですね。(笑)



Q.20 就農前に農業に抱いていたイメージは、農業を始めてみて変わりましたか。

農業に夢を持ってきたわけじゃないので、「思っていたのに実際はこうだった」というのは、ないですね。でも、田舎暮らしには、あこがれていました。

農業に対してのギャップというのは、最初に想像していたことが特に無いから無いですね。



Q.21 農業を始めて、肉体的なきつさは、ありましたか。

研修中の作業は、特にきついとは思いませんでした。もともと、アウトドアは好きだったんです。暑いのも苦手ではありませんでしたから。

ただ、研修中に、たまに農家さんのところ実地研修というか、1日だけのバイトに行くときがあるんです。そういうときは、1日中、本当の農家さんのやっているのと同じ仕事を、同じペースでこなしたら、すごくしんどかったです。次の日は足がガクガクになりました。

実地研修を受けて、実際の農家さんのつらさというものが、よくわかりました。

独立した当初は、すごくきつかったです。いまだに、きついのはきついですけれどね。最初は、足が動かないようになって、足を引きずって歩かなきゃいけないほど疲れが溜まりました。自分1人で始めて、最初の3カ月くらいは、体は本当にきつかったです。

ただ、きついという以上に、無我夢中でやっていましたね。



Q.22 研修中は、1人で高知に来ていたのですか。

子供もいたので、妻は大阪にいて、僕は1人で研修に来ました。



Q.23 研修先では、どのような作物の研修をしましたか。

主にピーマンをやっていました。あとは、キュウリとナスです。ピーマンの研修を受けていたので、ピーマン栽培が出来たらいいなと思っていたんです。

でも、ハウスを借りられることになった春野町は、全国有数のキュウリ産地なので、キュウリ栽培をすることにしました。



Q.24 研修中の1日スケジュールは、どのようなものでしたか。

普通の学校と一緒です。8時くらいからミーティングがあってそれからは畑で実践の研修です。




Q.25 研修は役にたったと思いますか。

農業という仕事を全然知りませんでしたから。暑いハウスの中で半日くらい作業をしたりして、まずは体づくりが出来ました。

あと、聴講として実践農大に週に2回、講座を受けにいきました。害虫・野菜全般の栽培・土づくり・経営に関すること、などの聴講を受けました。



Q.26 半年という研修期間は長いと思いますか、短いと思いますか。

短かったです。作物を相手にする研修ですから、1年は研修したかったです。



Q.27 農業に使う自己資金は、ありましたか。

農業用として用意していた自己資金は300万円くらいです。それとは別に、県から就農準備資金を、200万円借りました。

就農準備資金は3年据え置きで、その後5年返済という無利子の資金です。



Q.28 独立時に、農業関係で購入したものは、どのようなものですか。

一番高かったのは軽トラです。トラクターも管理機も、春野町では全部、農協で貸してくれるので、一切買っていないんです。

あと、ハウスの修繕に100万円くらい使いました。例えばサイドを巻き上げ式に直したりしたので、そういうことが結構高くつきました。就農時に、軽トラを買ったり、ハウスを直したりで、300万円くらい使いました。




Q.29 25アールのハウスの借り賃は幾らになりますか。

年間で50万円です。これは、温水暖房の設備とか、ポンプとか、空調のファンとか、設備すべてのレンタル込みです。



Q.30 経営面で苦労したことは、ありますか。

独立して最初の2年間は、売上から経費を引いたら、ほとんどお金が残らなかったんです。というのは、最初の2年間は、キュウリの市場価格がすごく低かったんです。結局、生活のために貯金を食いつぶしていきました。

3年目は、売上が1200万円まで伸びたので、利益がありました。



Q.31 現在の売り先は、どこですか。

すべて農協です。大阪の知り合いのところにも月に1~2回送っていますけれど、それはわずかな量です。



Q.32 農業の中で経営部分は、どれくらいを占めると思いますか。

実際にデスクワークに費やす時間は、ほとんどないですね。パソコンで青色申告をしているから、そのときだけがデスクワークです。



Q.33 独立1年目から、満足のいく作物はできましたか。

当然できないです。年を経るごとに、秀品率は良くなっていますけれど、収量は天候とか、流行りの病気とかに左右されるので、上がったり下がったりしています。




Q.34 自然災害で大きな被害を受けたことは、ありますか。

10月から翌年6月の、作の間に台風が来たことは、ありません。ただ、一度8月の終わりに大きな台風が来たことがあって、そのときにハウスの4分の1くらいがフレームごとつぶれました。



Q.35 自然災害に備えて、保険に入っていますか。

保険には入っています。ハウスの保険と、作物の保険にも入っています。



Q.36 現在までの、各年の農業売上は、どのくらいですか。

1年目が売上700万円。2年目が800万円くらい。3年目が1200万円。
4年目が950万円くらいです。

最初の2年は、経費を引いたらほとんど残らなくて、3年目は600万円くらい残りました。4年目は、ちょっと残ったくらいです。

年によってばらつきが出ることの原因は、まずは市場価格です。あと、ここ2年は原油高の影響が大きいです。



Q.37 おすすめの農作業グッズは、ありますか。

キュウリを収穫するときの、ツメです。

キュウリを収穫するときに、いちいちハサミで切らないんですよ。親指につけるキュウリカッターがあって、片手でキュウリを握ってプチンと切るんです。あれは便利だと思いましたね。片手で収穫できるから、早いんです。

でも、キュウリにしか使えないみたいですね。




Q.38 好きな農作物・嫌いな農作物は、ありますか。

つくってみたいのは、トマトです。でも、まずはキュウリが自分の納得いくようにつくれるまでは、ずっとキュウリをしたいと思っています。

キュウリに納得できて、ほかのものをしたいなという気持ちになるかどうかは、今はわからないです。

もし、そういう状態になったとしたら、同じ野菜でも差別化のできる野菜をやってみたいんです。キュウリは、あまり差別化できないでしょう。「これは特別なキュウリです」というのは、あまり無いと思います。トマトの場合、高級なトマトというのもありますから、そういう意味でトマトを作ってみたいです。



Q.39 農業について、将来の目標は、ありますか。

今後、借りている土地ではなく、自分の畑や田んぼが欲しいですね。




Q.40 田舎に移住するにあたり、不安だったことは、ありますか。

子供が思春期だったので、子供2人が高知に慣れてくれるかなということ。あと、教育の問題は不安でした。高知県は大学が県内に2つしかないんです。

子供にとっては、大阪にいたほうが選択肢は広いし、教育環境も整っているんです。田舎に行くと、教育環境が悪い、進学する大学も少ないということで選択肢が狭まるので、それが気になりましたね。実際、大変です。(笑)



Q.41 田舎に移住するにあたり、周りの人の反対はありましたか。

表立った反対はありませんでした。ただ、妻も実家が大阪なので、妻の親にしても、子供が知らない土地に行ってしまうのは寂しいですよね。
そういう、寂しい思いはあったと思いますが、特に反対はされませんでした。



Q.42 地域社会に溶け込むために、気をつけていることは、ありますか。

地元との付き合いというのは、思ったほどは、ありませんね。引っ越してすぐに自治会には入りました。あと、学校関係の PTA の役員とか、そういう活動は全部参加しています。地元で何か催しとかがある場合は、なるべく参加するようにしています。人間関係で特に困るとか、そんなことは無いですね。

地区の農家さん同士の集まりとか、そういう会には全部参加しています。僕は、地区のキュウリの園芸部長もしていますから、農家関係の集まりは楽しく参加しています。

妻のほうも、農協の女性部の飲み会が年に1回くらいあったりしますね。


Q.43 都会と、この地域の違いを、感じることはありますか。

周りの人に「今日は○○におったやろ」と言われることがあります。ここでは、常に誰かに見られていますよね。そういう違いは、あります。

でも、うちの家は、たまたま周りに家が無いんです。それで、近所付き合いのわずらわしさが少ないんですよ。これが、集落の真ん中に家があったら、大変だと思います。そういう意味で、付き合いは楽ですよね。

逆に言うと、集落に溶け込みにくいから、運が悪いのかもしれませんが。



Q.44 地域の風習やしきたりで困ったことは、ありましたか。

最初は、お酒の飲み方が分かりませんでした。高知には返杯という風習があるんですが、返杯のルールが分からなくて、困りました。

それと、言葉ですね。年配の人としゃべると、半分は何を言っているか、分かりません。そういう場合、いつも聞き直すわけにもいかないし、それは困りましたね。いまだに言葉が聞き取れません。



Q.45 この地域の良い点は、どのようなことがありますか。

わりと声をかけてくれるのが嬉しかったです。閉鎖的なイメージは、春野町には、ありません。どっちかというとオープンです。あと、人柄もおおらかで陽気です。南国の雰囲気があります。



Q.46 この地域に、都会の人が住む場合どのように家を手に入れたらいいですか。

不動産屋はあっても、商用目的の賃貸というのは、田舎だとほとんどないですね。だから、不動産屋に聞いても、賃貸の物件はほとんどないです。

僕も最初は、一応、不動産屋にも聞きました。でもやっぱり、地元の人に知り合いをつくるのが一番早いです。

田舎の人は、家が空いていても、見ず知らずの人には貸しませんね。



Q.47 この地域で子育てするにあたり、いい点はどのようなことですか。

いい点は、自然が多いですよね。あと、生徒が都会に比べると少ないので、その分、一人一人に先生の目が行き届きます。

また、みんなこの土地で育ってきているから、あの子はどこの子だというのをみんな知っていますよね。いろいろな人の目が行き届いているし、小中学校のときは、田舎のほうが環境はいいと思います。

僕も、もうちょっと早く田舎に来ていたら良かったと思っています。今から子供を育てるという人には、都会で育てるより、絶対に田舎のほうがいいと思います。



Q.48 この地域で子育てするにあたり、悪い点はどのようなことですか。

小中学校で困ったことはありませんが、高校になると、学校が遠くなります。
交通手段がないですね。

それと、子供が大きくなって、高知県で生計を立てていくとしたら、都会に比べると就職口が少ないし、給料が安いですよね。それに、大学も少ないです。

大きくなって、働く場がないからといって、子供が大阪なり東京に行くというのは、親としても寂しいですからね。




Q.49 バイト・パートをしようと思った場合、働き口はありますか。

ほかの農家さんの、農作業の手伝いくらいしか考えられないです。でも今は、農業が忙しくて、そんな暇はとてもないですね。農業をやるんだったら、農業だけで生活していかないといけないと思います。



Q.50 実際に田舎暮らしをしてみて、イメージが変わったことはありましたか。

住むところは、古民家みたいな、もっと田舎っぽい家を想像していたんです。(笑)田舎暮らしについては、古民家に住んで、周りに田んぼが広がっていてという、都会の人が思い描くような、典型的な田舎を想像していたんです。

でも、ここは、そんなに田舎を感じないところですね。高知県でも、山の中のほうだったら、もっと田舎っぽいところは、たくさんあると思いますけれど。



Q.51 田舎暮らしにおいて、良かったことは、どのようなことですか。

子供たちと一緒にいられるということです。サラリーマンのときだと、1日1回も会わないときもありました。会社から帰ってきたら夜中の12時とか。

今は、夜ご飯は必ず一緒に食べられます。家族との時間が増えました。



Q.52 田舎暮らしにおいて、嫌だったことは、どのようなことですか。

昔からの友達がいなし、親戚や親兄弟もいないから、寂しいですよね。

地元の農家さんは、子供のころから、お互いに知っていますよね。そういう人たちからしたら、僕らは突然来た者ですから。本当に慣れるまでは、今から何十年もかかるだろうと思っています。(笑)




Q.53 移住先を探すにあたり、何か注意することは、ありますか。

それぞれ、自分の好きな気候なり、何なりがあると思うんです。暖かいところがいいとか、涼しいところがいいとか、それが第一にありますよね。
実際に気に入った土地があるのなら、そこが一番いいと思いますよ。



Q.54 田舎で不動産を賃貸・売買するにあたり、注意することは、ありますか。

まず、地元の空家は、空いていてもなかなか貸してくれないということです。

家を借りるためには、地元の人と、1人でもいいので仲良くなることです。そうすると、田舎の人って、全部つながっているので、その人が○○さんの知り合いだということで貸してくれたりします。
とにかく地元に知り合いをつくることですね。

でも、いきなり行って知り合いをつくれと言われても、無理ですよね。(笑)
あとは、役場とかに何回も足を運ぶことです。不動産屋に頼むだけではなく、自分の目で見て、自分の足で歩いて、家を探したらいいと思います。何回も足を運んで、顔を覚えてもらうことです。



Q.55 農業を始めるにあたり、自己資金は必要だと思いますか。

必要です。1年目から農業でお金が稼げると思ったら間違いです。
農業に使うお金じゃなくて、当初何年間かの生活費が要りますね。




Q.56 自己資金が無いけれども就農したいという人には、何とアドバイスしますか。

まずは大きな農業団体とか、篤農家と呼ばれる大きな農家さんに、お金をもらいながら研修させてもらって、勉強したらいいと思います。

いきなり、お金がないのに自分ですべて構えたら、借金するしかないですね。
それは怖い。失敗する可能性は高いです。



Q.57 自己資金は、どれくらい必要だと思いますか。

200万円は要ると思います。



Q.58 就農するにあたり、農業の勉強・研修は必要だと思いますか。

最低1年間の研修は、必要だと思います。



Q.59 研修先を選ぶにあたり、注意することは、ありますか。

その人が有機農業をしたいと思っていたら、有機農業を教えてくれるところに行かないといけませんよね。

あとは、土のことをちゃんと教えてくれるところに行ったほうがいいです。
というのは、つくる作物というのは、後で変わってきます。何年もやったら、いろいろな作物をつくるでしょうから。
でも、何をつくるにしても、土は全部一緒です。

土の上から、見えている部分の研修というのは、つくる作物を決めてからでも出来ます。それよりも、見えない部分の、土の勉強をしっかりしたほうがいいと思います。

土の勉強をするためには、やっぱり有機農業系のところがいいと思います。

学校のような研修施設じゃなくても、農協や、周りの農家さんから教えてもらうことも、多いです。
春野町は、作物の栽培方法を、農協が一から全部指導してくれます。僕の場合は、春野町で独立してから、農協と近所の農家さんに、キュウリの栽培方法を教えてもらいました。

ただ、農家さんも、人によって言うことが違うんです。その人なりのポリシーとか、やり方がありますから。
2人から、正反対のことを言われることもあります。

農家さんに教えてもらうとしたら、地域で一番上手な農家さんを見つけて、そのの人の言うことだけを聞くことです。1人の農家さんに絞って、その人だけに教えてもらったほうがいいと思います。



Q.60 農業に向いている性格は、ありますか。

勤勉で、惜しみなく働く人です。休むこと、休憩することばかりを考えていたらとてもじゃないけれど、農業は出来ません。



Q.61 新規就農者が栽培作物を選ぶにあたり、注意することはありますか。

その人が住む土地によって、栽培作物は限られてきます。例えば、春野町のような施設園芸地帯では、有機農業は出来ません。

あと、スイカやメロンのような、博打的な作物は、新規就農者には薦められません。スイカもメロンも、一つの苗から実が1個しかとれないんです。その1個が、ちゃんと作れればいいんですが、作れなかった場合は、収入がゼロで、経費だけがかかってしまいます。

でも、キュウリの場合は、採っている期間が何カ月もあります。初期に失敗したとしても、後で立ち直ったら採れます。

キュウリのように、単価は低いけれども、長い期間にわたり、幾つも採れる作物は、安心です。逆に、1個で高単価な作物は、失敗したときが怖いですね。
また、高単価な作物は、栽培技術を持っていて、よほど高品質の作物を作らないと、あまり利益も出ません。



Q.62 新規就農する場合、何歳までにやったらいいと思いますか。

遅くても40歳までだと思います。40歳までが「青年」という扱いなんですよ。
だから「青年」のうちに、ということです。
子供がいる人は、子供が小さいうちに就農したほうがいいと思います。



Q.63 農業を始めても役に立つ、前職の職業・資格・特技などは、何かありますか。

自分で宣伝して、直販なりするのであれば、野菜ソムリエのような資格を持っていたら、有利だとは思います。

それと、自分で全部、年末調整などの税関係の仕事をしないといけないのでパソコンは使えないと困ります。自分が経営者になるわけですから、経理の処理をしないといけません。



Q.64 農業・田舎暮らしをする上で、読んでおいたほうがいい本は、ありますか。

僕が読んでいたのは、田舎暮らしの、良い面が書いてあるような本ばかりでした。そういう本はいろいろと読みましたが、結局、いいことしか書いていないんですよね。特にこれが良いというのは、ないです。

農業に関する本は、全然読んでいません。



Q.65 100人の新規就農希望者がいるとすると、結果、100人中何人が農業で生計を立てられると思いますか。

4分の1くらいだと思います。研修先での同期生は、十数人いたんですが、今、農業をちゃんとやっているのは、僕を含めて3人だけです。



Q.66 農業で生計を立てることが出来る人と、出来ない人との差は何ですか。

まず、都会から独身で来た人が、1人で農業を始める人というのは、なかなか難しいと、僕は思います。

夫婦であったり、親であったり、とにかく家族がいて、自分のサポートをしてくれる人がいないと、農業をやっていくのは無理だと思います。

研修中の同期生も、独身で、1人で来ていた人が多かったんです。農作業をする上でも、1人じゃ出来ない作業は、たくさんあります。

あと、夢だけを持ってくる人がいますが、そういう人は無理です。農業に憧れを抱いて来ても、実際の大変さを知ったら、やめる人が多いと思います。



Q.67 移住前に、都会でやっておいたほうがいいことは、ありますか。

まずは体力づくりです。あと、ちょっとでも資金をためておくことです。



Q.68 農業を始めて何年くらいしたら、収入が安定すると思いますか。

3年くらいだと思います。



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Q.69 独身・夫婦・子供連れ、それぞれに新規就農の有利・不利は、ありますか。

独身で地域に入るより、夫婦なりの家族単位で地域に入るほうが、輪が広がりやすいし、受け入れてもらいやすいです。
そういう意味で、独身よりも、家族で来たほうがいいと思います。



Q.70 失敗したという体験は、何かありますか。

農作業に関して失敗したと思うことは、毎年たくさんあります。

それ以外としては、土の勉強・土壌菌の勉強を、もっとしておけば良かったと思っています。有機農業系の学校で、きちんと土の勉強をしたかったです。土がいいと、病気も来にくいし、虫もつきにくいし、すべてがいいですよね。

あと、この地域で農業を始めるんだったら、40アール以上の土地を借りて始めたほうがいいと思います。自分が耕作している面積によって、農地を購入する権利が発生するか、しないかという問題が出てくるんです。

この地域では、40アール以上の土地で、3年以上農業をやっている人は、農地を購入する権利が出来るんです。僕は3年以上、農業をやっていますが、ハウスが25アールしかないので、田んぼや畑を買う権利がないんです。

そういう意味で、後々に農地を購入したくなるかもしれないし、その地域で定められている、売買権利が発生するための下限面積は、借りたほうがいいです。

地域で定められている下限面積は、役場の農業委員に聞きに行ったら教えてくれます。

その土地でずっとやっていくつもりなら、やっぱり自分の田んぼや畑が欲しいですよね。実際に自分が欲しくなったときに土地が買えないというのは、すごくつらいです。

最初からそこまで計画を立てておいたほうがいいと思います。




Q.71 新規就農者が、サラリーマン並の400万円程度の収入を得ようと思ったらどのような農業形態が最も可能性が高いと思いますか。

それは無理ですね。(笑)大体、農業というのは、そんなにお金が儲かる職業じゃないですから。

昔からの農家さんで、広大な土地を持っていて、人を雇っている人は、それだけお金が儲かりますが、そうじゃなければ、農業は儲かりません。新規就農者が、その程度の収入を得ることは、無理だと思います。もしそれが可能だとしたら、みんな就農しています。

就農者って、すごく少ないんです。実際、農家さんでも、子供に農業を継がせようとしないんです。きつくて収入が少ないということが分かっていますから。
サラリーマンのほうが、楽で稼ぎがあります。だから、みんな農業を、子供にはさせたくないんです。僕も子供には、農業をさせたくないです。

僕は、最初はミョウガをやりたかったんです。今は価格が下落していますが、その当時は、収入が良さそうだったからです。以前のミョウガのように、その時期に注目されている野菜を見極めてつくったら、そのときはいいですよね。

ただ、ミョウガみたいに、一時期すごく値段がよくても、何年かしたら価格が下がります。絶対にそうなると思います。毎年、価格が高くつく作物は、変わります。だから、栽培作物に関しても、これをつくったら絶対にサラリーマン並の収入が得られるとか、そういう作物は、ありません。

サラリーマン並の収入が得られると思って農業をやろうと思っているのなら、やめておいたほうがいいです。



Q.72 I ターン就農して良かったことは、どのようなことですか。

都会と比べたら、人付き合いのストレスは少ないですね。満員電車に乗らなくていいですし。人が少ないことが、いいです。友達が少ないのは寂しいけれど人が少ないのはいいですね。


Q.73 I ターン就農して嫌だったことは、どのようなことですか。

やっぱり、親戚や友達と離れたことが、一番嫌だったことです。でも、それも分かった上で始めたことなので、それは納得済みのことです。
それ以外に、特に嫌だったことは無いですね。



Q.74 I ターン就農を成功させるために、重要なことは何ですか。

地元の人とのお付き合いです。相手の話をちゃんと聞いて、周りの人に、可愛がってもらうことです。
あと、独身の人は、できるだけパートナーを見つけて、一緒に来ることです。



Q.75 I ターン就農希望者に、アドバイスはありますか。

農業は大変だぞ、ということです。(笑)

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